アメリカを今もっとも熱中させる男、NBA(アメリカプロバスケットボールリーグ)、ニューヨークニックスのJeremy Lin選手。 アメリカンドリームを地でいくこの選手が、アメリカのスポーツ界だけでなく、社会を巻き込み一大旋風になっている。マスコミ、テレビが連日彼について報道、17番のユニフォームは売上げが3000%にアップし、アメリカは彼に首ったけだ。
カリフォルニア育ちのアジアンアメリカンプレイヤー
1988年生まれ、両親は台湾人のアジアンアメリカン。カリフォルニア州で育ち、高校時代から有望な選手ではあったが、バスケットボール名門校からの奨学金オファーはなく、ハーバード大学へ進学。4年間アイヴィーリーグで活躍したもののNBAドラフトでは指名されなかった。サマーリーグを経て、GSウォーリアーズ、Hロケッツを渡り歩いた後、11年12月にNYニックスに移籍する。ここまでは特に目立った活躍はなく、全く無名な選手だった。
ヒーロー見参
12年1月スター選手が次々とケガで離脱する中、NYの下部組織でトリプルダブルを記録したことによって、トップチームに再召集されたリンは、2月4日のNJネッツ戦でその片鱗を見せる。ベンチスタートながら、25得点7アシストでチームの勝利に貢献。翌試合からスタメンになると28得点8アシスト、23得点10アシストと次々とすさまじい数字をたたき出し、チームも三連勝。一気に時の人となる。
そして迎えた本拠地ニューヨークでのLAレイカーズ戦。レイカーズ相手には、さすがのリンも活躍できまいといったおおかたの予想を裏切り、38得点7アシストと大爆発。チームに勝利をもたらし、奇跡を確信へと変えた。
さらに、その次のTRラプターズ戦では、27得点11アシストに加え、試合終了間際残り0.5秒でこの決勝スリーポイント。伝説は終わらない。
NBAを救う男
リンにかかわる全ての要素が、アメリカ好みのサクセスストーリー。移民の子、勉強では超優秀でもバスケットボールでは全く強豪校ではないハーバードを出ながら、努力で夢のチャンスを勝ち取り、スター不在で倒れかけたチームを救った。
アジア系でありながら、アメリカ生まれアメリカ育ちであり、トラッシュトークにも慣れている。恵まれた体躯を活かしてガツガツとドライブインをする、毎試合20点以上取りながら、8.5アシストし、挙句の果てに試合を決めるクラッチシュートも打てる。マスコミ対応も優等生で、謙虚な姿勢ながらインタビュアーが欲しがる言葉を次々と返す。頭も良くて、夢のために努力を惜しまない、彼は紛れもないアメリカのスターなのだ。
今年、選手側とオーナー側が労使協定で多いにもめたことにより、シーズンが短縮し、ファン離れが懸念されていたNBAにとってもこれ以上にないスターの誕生にリーグも胸をなでおろしているだろう。
これから
アメリカは、彼をinsanity(狂気)ににかけて”Linsanity(リンサニティー)”とよぶ。上手すぎてクレイジーだ、ヤバイといった感覚。彼は本物だった、と専門家たちも口をそろえるが、NBAの正念場はプレイオフ。今後マークも厳しくなる中、チームをプレイオフに導き、そこで勝ちあがれるのか、来シーズン以降もつづけられるのか?そういった疑いもなくはない。
しかし、彼がこれまで乗り越えてきた多くの壁を考えれば、次の壁はそこまで高くないかもしれない。そして彼が活躍は、まだまだ差別的とも風潮のあるアメリカプロスポーツ界、社会さえも変えてしまうかもしれない。実際にアメリカでは、特にリンと人種の問題をとりあげる言論が活発だ。世論はこれまでの差別的で閉鎖的だったスポーツ界に対して批判的であると同時に、リンが今後切り開くであろう世界へ期待を寄せている。
夢はまだ始まったばかり。今後のリンの活躍に期待。
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